日本の海外認知はどう変わってきたのか? Google Books Ngram Viewerで見る

Google Books Ngram Viewerでウェブ以前の情報をキーワード検索する

Google Books Ngram ViewerGoogle Booksに収録された数百万冊のデジタル化された書籍の全文データから特定の単語の出現頻度を年代別に検出することができるツールです。2010年に実験的に制作されたため、1500年から2008年までの書籍データが対象となっています。対象言語は英語を中心にドイツ語、ロシア語、フランス語などがあります(日本語は残念ながら対象外です)。

あるキーワードの出現頻度を時代別におっていくことで、言葉の用法や文法の変化を確認することができるため、おもにコーパス言語学という分野で使用されています。

このツールの面白さはウェブ以前の情報を検索し、量的に把握できるところにあると思います。本稿では本来とはちょっと違った使い方でこのツールをご紹介したいと思います。

英語の本における日本の出現頻度の推移

グラフは英語の文献における”Japan”の出現頻度の推移です。明治維新以降、少しづつ上がり始め、1914年の第一次世界大戦、1920年の国際連盟発足と常任理事国入り、1941年の第二次世界大戦参戦が大きなピークとなっています。それ以降ではバブル経済が大きなピークとなっており、1990年以降、頻度は減少しています。

他国と比較

他国との比較を見てみましょう。上が”China”、下が”France”との比較です。

様々なことが読み取れるグラフですが、2つのグラフに共通するのはJapanの出現頻度が両国よりも大きかったのはバブル経済の時期だけという点です。同時期の日本への注目がいかに大きかったのかが推察できますね。

日本の文化と日本製品

日本の文化はどうでしょうか?浮世絵(Ukiyoe)を検索したのが以下のグラフです。

”Japan”のグラフとはちがう1960年代初頭に一つのピークがあります。一体何があったのでしょうか?Ngram Viewerではワイルドカードが使用できます。”Ukiyo-e *”で検索することでUkiyo-eの次の文字として使用される頻度が多いものを調べることができます。

1960年代の初頭に”Ukiyo-e school”と”Ukiyo-e artists”の大きなピークがあります。浮世絵学校がたくさんできたわけではなく、この場合のschoolはartistsが同じ時期に増えていることと合わせて考えると「○○派」の意味だと思います。この時期に海外における浮世絵研究が盛んになり、浮世絵師の分類が進んだということではないかと想像します。

その他、日本自体の注目度に関わらず著しい伸びを見せているのは世界のトヨタですが、1990年代後半にやや陰りがみえます。

何があっても圧倒的な強さを見せるのはSUSHI(グラフ上)でした。そしてクールジャパンを象徴するOTAKU(グラフ下)も垂直的な伸びを見せています。

日本は食とクールジャパンの国になったのでしょうか?というわけでTokyota, Sushi, Otakuを比較してみると、Toyotaの頻度がずば抜けて多く、2008年の段階ではまだまだ日本は工業製品で知られる国のようでした。もし、Ngram Viewerのデータが2017年まであれば結果は違うのかもしれませんね。

おまけ

村上春樹と宮﨑駿はどちらがたくさん出てくるか比較してみました。2008年の時点では宮﨑駿に軍配が上がっています。こちらもまたノーベル賞候補として何度も取り上げられるようになった現在だとまた少し違うのかもしれませんが。

Ngram Viewerではワイルドカードの他、活用形など様々なことが調べられます。ご興味のある方はこちらのヘルプを読まれると事例付きで使い方が紹介されています。